IBARAKI EXPORTS(イバラキエキスポーツ)

INTERVIEW

株式会社柴沼醤油インターナショナル -困難も楽しみながら巨大な海外マーケットに「本物の日本食」を広める!-

-目次-

海外輸出に積極的に取り組んでいるいばらきグローバルビジネス推進協議会の会員企業・団体に、輸出についてインタビューをします!
第二回は、株式会社柴沼醤油インターナショナルの柴沼秀篤代表取締役社長にお話をうかがいました。


輸出展開している国は?

 62か国になります。ヨーロッパと中東がメインとなっておりますが、他にアジア、アメリカ、オセアニアへも展開しています。
 販売はBtoB、BtoC両方ありますが、9割がBtoBです。

輸出を目指したきっかけは?

 初めての輸出は2009年、オーストラリアのメルボルンです。きっかけは、商社である相手側からのコンタクトでした。この商社とは今でも取引が続いており、親しい付き合いをさせていただいています。
 当時からすでに国内では人口減少・洋食化が進み、6000社あった国内の醤油メーカーは1000社程にまで減るなど、醤油業界全体が厳しい状況となっていました。柴沼醤油でも、主力のひとつであったお中元・お歳暮の需要が減っていたため、量販店と一緒に商品開発をしたり、何か思いついてはチャレンジしてみたりと、この局面を打開できる『何か』を探しているところでした。
 そんな時に、オーストラリアのメルボルンで輸入をしている商社が、インターネットで【老舗・木桶】というキーワードでたまたま柴沼醤油を見つけ、コンタクトをとってきました。
 先方の企業名ももちろん知らないし、社内でも輸出の知識はなかったので、最初は「うちではできないと思う。」と断りました。すると、先方が弊社に来てくださり、輸出に対して持っていたこちらの不安を払拭してくれたんです。そして1カ月後に自らオーストラリアを訪問しました。
 当時メルボルン内では、「日本食」カテゴリの店が約700店舗あり、まずはそんなにたくさんあることに驚きました。ですが大手醤油製造メーカーの商品しか入っていなかったため、インポーターと現地のレストランを1軒1軒回ると、「こんな醤油が欲しかった!」「おいしい!」などとレストランのオーナーが喜んでくださり、その場で注文したいという声も多くいただきました。その場で味見をさせると日本以上に喜んでくださり、ダイレクトにお客様の反応を感じられて、心から楽しいと思いました。
 それから、1カ月に1回はメルボルンに行き、受注を増やしていきました。最初は採算が取れず社内で懐疑的な意見もありましたが、30ケースから始まった取引が、50ケース、100ケースになり、半年ちょっとでコンテナ1本を輸出できるようになりました。取引店舗が増えていくと、「ほかの国でも展開できる!」という自信になり、いくつかの国を調べた結果、次はヨーロッパで取り組むこととなりました。

オーストラリアの次にヨーロッパに向かったのはなぜですか。

 柴沼醤油の強みは、相手の国・企業に合わせて専用の商品を作れること、つまり「小回りがきく」ことです。オーストラリアで直接オーナーの声を聞くなかで、「すでに出回っているガリバー(大手醤油製造メーカー)は強豪だが、細かい動きができない。うちの強みをいかせば大きな取引につながるだろう。」と可能性を感じました。
 様々な地域を見てみると、アジアは、日本からの距離が近いため取引をしやすいように感じましたが、安価な醤油が出回っていましたし、大手以外の日本の企業も多く参入していました。アメリカも、マーケットは大きくて魅力的ですが、やはり競合が多く感じました。その点ヨーロッパは、比較的競合が少ないほか、EUというくくりで見ると大きいイメージですが、一国一国は小さいことから、柴沼醤油の強みをいかして展開できると思いました。

ヨーロッパに輸出するために行った活動

 オーストラリアのメルボルンで取引が軌道に乗ったころ、2011年の東日本大震災がありました。その後、2012年に震災復興の一環で『SIAL PARISシアル・パリ食の国際見本市』に無償で出展できることになり、ここで、今も最大の取引先であるスイスの寿司チェーンを展開している企業と出会いました。この出会いは、取引先としても大きいですが、何よりも、ヨーロッパに向けた商品の作り方を学べたということで得るものが大きかったと感じています。この企業とは約1年半をかけて一緒に商品を作り上げていったのですが、ストーリー性や商品デザイン等を重視した、とても洗練された商品が出来上がりました。見た目、機能性、言語等の標記、環境対応など大切なことを一から教えていただき、今でも商品企画をする際に生かしています。
 その後、さらに国を広げていくことになりますが、新たな相手と組む時は、最初は必ず自分で行くようにしています。

取引はどのように進めていますか。

 取引内容は直接取引先と固めるようにしています。代金回収や船の手配等は一部商社にまかせる時もありますが、これは後でも決められます。交渉は全て自社で行い、主導権を自社が持つようにしています。
 また、1・2番手の商社はすでに大手メーカーと組んでいることがほとんどですので、3・4番手の商社を探したりもします。そういった商社は、訪問すると皆ハートフルに迎えてくれて、その地の業界の情報を教えてくれたりもします。
 さらに、取引をする商社・スーパー(小売り)、レストランのシェフの方には土浦市にある醤油の醸造蔵を見ていただくようにしています。製造している場所を見せるとより商品の良さを感じていただけますし、併せて茨城県内をご案内すると、とても喜んでいただけます。親しくなれると、例えばシェフが店を移っても、自社製品を使い続けていただけたりします。

輸出に至るまでに苦労した点と解決策

 苦労した点は、海外は予想外の展開が多いことです。特に英語圏以外だと言語が不自由なため看板等が読めず迷ってしまったり、電車・飛行機等が予定どおりに来ないこともあります。また、相手の適当さに困ることもあります。
 解決策は、予想外の状況を受け入れることですね。楽しむことです。言語は片言でも、オーナーの自分が直接行けば人柄で判断してくれますし、すごく喜んでくれるのでおもしろいです。不自由がある分、日本や自社の良さを感じることもできます。

輸出の継続・販路拡大に向けた今後の課題・方針・目標

 取引相手国を70か国まで広げていきたいです。そのためには、人材育成が課題となっています。海外営業に関しては、今は自分ともう一人の2人体制で行っていますが、2~3年かけて若手を育成したいと思います。営業では、相手がどういうものを求めているか、数ある自社商品から選んで提案する必要がありますが、この感覚的なノウハウをいかに伝えるか検討しているところです。併せて社内も働きやすい環境を整え、長期的に活躍できる人材を育てていきたいです。
 また、今後はトータルで「日本食」を海外の人たちに伝えたいと思っています。「日本食」レストランといっても、日本に来たこともない人が経営していたり、全て外国産の食材で作っていたりする店舗も多くあります。いくら海外で「日本食」レストランが増えているといっても、この状況では喜んでいられません。これらの日本食を『本物の日本食』に変えるべく、2017年に株式会社柴沼醤油インターナショナルを立ち上げ、自社商品以外の商品も一緒に提案できるように体制を整えました。日本食が一過性のブームにならないよう、日本食のクオリティを高めていきたいと考えています。

輸出を目指す県内事業者へのアドバイス

 粘り強く輸出に取り組むことです。例えば展示会や商談会に出展したとしても、実際に取引に繋がる商談は、経験上100回に1回です。私も最初の展示会は誰も足を止めてもらえませんでしたし、赤字で、投資のようなものでした。費用対効果は中長期でみて、まだまだ伸びる海外への進出を諦めずに実現させてください。簡単ではないからこそ、オーナー自ら動かなければなりません。
 茨城県は、輸出の希望する事業者へのサポートが厚いと感じます。国、県などのサポートを活用し、がんばってください!

株式会社柴沼醤油インターナショナル(かぶしきがいしゃしばぬましょうゆいんたーなしょなる)

代表者名
柴沼秀篤
住所
茨城県つくば市榎戸783番地12 M-203号
電話番号
029-839-9736
URL
https://www.shibanuma.com/

当記事の内容は 2020/11/06 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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